この記事のポイント
- マンションの買取は、不動産会社に直接買ってもらう売り方です。仲介のように一般の買主を探さないので、仲介手数料はかかりません
- そのかわり、買取の価格は仲介で売れる価格より低くなるのが一般的です。会社は買ったあとのリフォーム・再販売の費用や税金、利益を見込んで価格を決めるためです
- 3,500万円で売れる部屋なら、仲介手数料の上限は122.1万円。買取価格が約3,378万円(96.5%)を下回るなら、手取りは仲介のほうが多い計算になります
- 買取でも、住宅ローンは代金で返して抵当権を抹消でき、マイホームの3,000万円特別控除も使えます(親族の会社など「特別の関係がある人」に売る場合を除く)
- 買い取る会社が宅地建物取引業の免許を持っているか、国土交通省の検索システムで確かめてから話を進めましょう
「すぐに売れる」「内見なし」「仲介手数料0円」。マンションの売却を調べると、買取の広告をよく目にします。ただ、早く確実に売れる代わりに、価格は仲介より下がります。どれだけ下がるなら買取を選ぶ意味があるのかは、仲介で売ったときの手取りと比べないとわかりません。この記事では、買取の仕組みと仲介との違い、価格が下がる理由、手取りで比べる計算の仕方、住宅ローン・税金・契約不適合責任の扱い、相談する前に確かめることを、法令と国税庁の資料にもとづいて説明します。
マンションの買取とは:仲介との違い
マンションの売り方は、大きく「仲介」と「買取」の2つです。
- 仲介:不動産会社と媒介契約を結び、会社が一般の買主を探します。売買契約は売主と買主の間で結び、会社には成約したときに仲介手数料を払います
- 買取:不動産会社(または買取を事業にしている会社)が自ら買主になります。売買契約は売主と会社の間で結びます
| 仲介 | 買取 | |
|---|---|---|
| 買主 | 一般の個人など | 不動産会社 |
| 価格 | 市場で決まる(売り出し価格から交渉) | 会社が出す買取価格。仲介で売れる価格より低いのが一般的 |
| 仲介手数料 | かかる(売買価格が400万円を超えるなら、上限は売買価格×3%+6万円+消費税) | かからない |
| 売れるまでの期間 | 買主が見つかるまでわからない | 価格に合意すれば、引き渡しの日を決めやすい |
| 内見 | 購入希望者の内見に対応する | 会社の担当者が部屋を確認するだけ |
| 近所や知人に知られるか | 広告・ポータルサイトに載る | 広告を出さずに売れる |
| 契約不適合責任 | 免責の特約を結ぶかどうかは交渉 | 会社が買主なので、免責の特約を提案されることがある(後述) |
仲介手数料は、宅地建物取引業者が売買の「代理または媒介」をしたときに受け取れる報酬です(宅地建物取引業法 第46条)。会社が自分で買う買取は媒介ではないので、仲介手数料はかかりません。仲介手数料の計算は「不動産の仲介手数料はいくら?」で説明しています。
「即時買取」と「買取保証」
買取には、すぐに会社が買う即時買取のほかに、まず仲介で売り出し、決めた期間内に売れなかったらあらかじめ決めた価格で会社が買い取る買取保証(買取保証付きの仲介)があります。買取保証は、仲介で高く売れる可能性を残しつつ、売れなかったときの期限と最低の価格を決めておける方法です。保証の価格、期間、仲介の媒介契約の種類が条件になっているかは、会社ごとに違います。媒介契約の種類は「マンション査定の方法と売却の流れ」にまとめています。
買取の価格が仲介より低くなる理由
買取の会社は、買った部屋をリフォームして売り直す(買取再販)ことで利益を出します。買取価格は、会社が売り直すときの見込み価格から、次のような費用と利益を差し引いて決まります。
- リフォーム・クリーニングの費用
- 買ったときの登記の費用や不動産取得税、売り直すときの広告や仲介の費用
- 売れるまでの管理費・修繕積立金・固定資産税、借入の利息
- 売れ残ったり値下げしたりするリスクと、会社の利益
つまり、買取価格の差は「早く・確実に・手間なく売るための代金」とも言えます。どのくらい下がるかは、部屋の状態、立地、会社の再販の見込みによって変わり、法令や公的な統計で決まった割合はありません。提示された買取価格だけを見るのではなく、仲介で売れそうな価格(相場)を先に知っておくことが、比べるときの土台になります。
手取りで比べる:買取価格がいくらなら仲介と並ぶか
仲介と買取を比べるときは、売買価格ではなく、費用を差し引いた手取りで比べます。仲介で3,500万円で売れる見込みの部屋を例に、買取価格がいくら以上なら手取りが仲介と同じになるか(損益分岐)を計算してみます。
① 仲介手数料だけを比べる場合仲介手数料の上限は、3,500万円 × 3% + 6万円 = 111万円。消費税10%を加えて122.1万円です。買取なら、これがかかりません。
3,500万円 − 122.1万円 = 3,377.9万円
買取価格がこれ(仲介の見込み価格の約96.5%)を下回るなら、仲介手数料を払っても仲介のほうが手取りが多い計算になります。
② 売れるまでの費用も考える場合すでに住み替え先に移っていて、仲介で売れるまでに6か月かかるとします。その間の管理費・修繕積立金を月3万円、固定資産税を年12万円(6か月分で6万円)と仮定すると、売れるまでの費用は 3万円 × 6か月 + 6万円 = 24万円です。
3,500万円 − 122.1万円 − 24万円 = 3,353.9万円(約95.8%)
| 比べ方 | 仲介の手取り(費用を引いた額) | 買取価格がこれを超えれば買取が有利 |
|---|---|---|
| 仲介手数料だけ | 3,377.9万円 | 3,377.9万円(約96.5%) |
| 売れるまでの費用(6か月・24万円)も入れる | 3,353.9万円 | 3,353.9万円(約95.8%) |
実際には、仲介でも売り出し価格から値下げすることがあり、売れるまでの期間もわかりません。逆に、値下げや期間を大きく見込みすぎると、買取の安さを過小に見てしまいます。「仲介でいくらまで下げられるか」の下限を手取りで決めておき、それと買取価格を比べるのが現実的です。値下げの決め方は「マンションが売れないのはなぜ?」、費用の全体は「マンション売却にかかる費用一覧」にまとめています。
住宅ローンが残っていても買取できる
住宅ローンが残っている部屋も、仲介と同じように買い取ってもらえます。決済の日に、買取代金で残りのローンを返し、抵当権を抹消して、会社に所有権を移す流れです。抵当権抹消の登録免許税は不動産1個につき1,000円(登録免許税法 別表第一 一(十五))で、マンションの部屋と敷地1筆なら2,000円です。
買取価格がローンの残りより低い場合(オーバーローン)は、差額を手持ちの資金で用意しないと抵当権を抹消できません。仲介より価格が下がる買取では、この差額が大きくなりやすい点に注意しましょう。残債の確かめ方と返しきれないときの方法は「住宅ローンが残っている家は売れる?」、登記の費用は「マンション売却の登記費用はいくら?」で説明しています。
税金:3,000万円控除は買取でも使える
買取でも、売って利益(譲渡所得)が出れば税金の計算は仲介と同じです。自分が住んでいる(または住まなくなってから3年目の12月31日までの)マイホームを売った場合は、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます(国税庁 No.3302)。
ただし、この特例は親子や夫婦など「特別の関係がある人」に売った場合は使えません。国税庁は、特別の関係がある人に「特殊な関係のある法人」も含まれるとしています。一般の不動産会社への買取なら問題ありませんが、自分や親族が経営する会社に買い取ってもらう場合は、税務署か税理士に確認しましょう。計算の仕方は「マンション売却の税金はいくら?」にあります。
契約不適合責任:免責の特約と、その限界
売った部屋に契約の内容と合わない不具合(雨漏り・設備の故障など)があったとき、売主は買主から修補や代金の減額などを求められることがあります(契約不適合責任)。買取では、買主の会社が不具合を見込んで価格を決めることが多く、売主の責任を負わない(免責)特約を提案されることがあります。
宅地建物取引業法 第40条の制限は宅建業者が売主のときの定めなので、会社が買主になる買取には当てはまりません。ただし、免責の特約を結んでも、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れません(民法 第572条)。知っている不具合は、契約の前に書面で伝えておきましょう。詳しくは「契約不適合責任とは?」で説明しています。
買取を相談する前に確かめること
- 1仲介で売れそうな価格(相場)を知る近い条件の成約事例から相場をつかむ。買取価格を比べる物差しになる。
- 2仲介で売ったときの手取りと、下げられる下限を決める仲介手数料・売れるまでの費用・ローンの残りを差し引いて計算する。
- 3買い取る会社の免許を確かめる国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で、免許番号と処分歴を調べる。
- 4買取価格の根拠を聞き、複数の会社と比べるリフォーム費用や再販の見込みなど、価格の内訳を説明してもらう。
- 5契約書の条件を読む引き渡しの日、契約不適合責任の特約、手付金と解除の条件、残置物の扱いを確認する。
宅地建物取引業(宅地・建物の売買や、その媒介などを業として行うこと)を営むには、国土交通大臣か都道府県知事の免許が必要で、免許のない者は宅地建物取引業を営むことも、その広告もできません(宅地建物取引業法 第2条・第3条・第12条)。買い取った部屋を売り直す会社は、この免許を受けているのが前提です。免許の有効期間は5年(第3条第2項)なので、番号と有効期間を確かめておくと安心です。
仲介の会社から「うちで買い取ります」と提案されることもあります。買取がすぐに決まると、その会社は仲介で買主を探す手間をかけずに済みます。仲介の依頼を受けている会社が、他社からの問い合わせを断って自社や提携先の買取に誘導していないか気になるときは、レインズの登録状況を確かめる方法があります(「不動産の囲い込みとは?」)。一括査定で複数の会社に問い合わせるときの注意は「不動産一括査定のデメリットは?」にまとめています。手付金の上限や解除できる期限は「不動産売買の手付金とは?」で説明しています。
まとめ
- 買取は不動産会社が自ら買主になる売り方。仲介手数料はかからず、期限を決めて売りやすいが、価格は仲介で売れる価格より低くなるのが一般的
- 比べるのは売買価格ではなく手取り。3,500万円の例では、仲介手数料の上限122.1万円を引いた3,377.9万円(約96.5%)が損益分岐の目安
- 住宅ローンが残っていても買取できるが、買取価格がローンの残りを下回ると差額の用意が要る
- 3,000万円控除は買取でも使える。ただし親族や「特殊な関係のある法人」への売却は対象外
- 免責の特約を結んでも、知りながら告げなかった不具合の責任は残る。会社の免許も確かめる
参考にした資料
- 宅地建物取引業法 第2条・第3条・第12条・第40条・第46条(e-Gov 法令検索。2026年10月30日確認)
- 国土交通省告示「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号。令和6年7月1日施行の改正を含む。2026年10月30日確認)
- 民法 第572条(e-Gov 法令検索。2026年10月30日確認)
- 登録免許税法 別表第一 一(十五)(e-Gov 法令検索。2026年10月30日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等。2026年10月30日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.7108「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」(令和8年4月1日現在法令等。2026年10月30日確認)
- 国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」
※ 2026年10月時点の制度にもとづく一般的な説明です。計算例の管理費・修繕積立金・固定資産税の額は仮の数字です。個別の価格・税金・契約は、不動産会社・税理士・弁護士にご確認ください。
よくある質問
- Qマンションの買取と仲介はどう違いますか?
- A仲介は不動産会社が一般の買主を探し、売主と買主の間で売買契約を結ぶ売り方で、成約すると仲介手数料がかかります。買取は不動産会社が自ら買主になる売り方で、仲介手数料はかかりませんが、価格は仲介で売れる価格より低くなるのが一般的です。
- Q買取価格はいくらなら損をしませんか?
- A仲介で売ったときの手取りと比べます。仲介で3,500万円で売れる見込みなら、仲介手数料の上限は122.1万円なので、買取価格が約3,378万円(約96.5%)を下回ると、仲介手数料を払っても仲介のほうが手取りが多い計算です。売れるまでにかかる管理費などを入れると、この境目は下がります。
- Q住宅ローンが残っていても買取してもらえますか?
- Aできます。決済の日に買取代金でローンを返し、抵当権を抹消して所有権を移します。買取価格がローンの残りより低いときは、差額を手持ちの資金で用意する必要があります。
- Q買取でもマイホームの3,000万円特別控除は使えますか?
- A要件を満たせば使えます。ただし、親子や夫婦など特別の関係がある人に売った場合は使えず、国税庁はこれに特殊な関係のある法人も含むとしています。自分や親族の会社に買い取ってもらう場合は、税務署か税理士に確認してください。
- Q買取なら契約不適合責任は負わなくてよいですか?
- A売主の責任を免除する特約を結べば、原則として責任を負いません。ただし、売主が知りながら告げなかった事実については、特約があっても責任を免れません(民法第572条)。知っている不具合は契約前に書面で伝えましょう。
サムネイルのイラストは AI で生成したイメージです







