この記事のポイント
- マンションを売るときに売主が費用を出す登記は、抵当権抹消登記(住宅ローンが残っているとき)と住所変更登記(登記の住所が今の住所と違うとき)の2つです
- 登録免許税はどちらも不動産1個につき1,000円。部屋(建物)と敷地(土地1筆)なら、それぞれ2,000円です
- 司法書士の報酬は、日本司法書士会連合会の2024年のアンケートで平均が抵当権抹消17,470円、住所変更13,913円でした
- 買主の名義にする所有権移転登記の費用は、買主が負担するのが一般的です
- 住所変更登記は2026年4月1日から義務になり、住所が変わった日から2年以内の申請が必要です
マンションを売るときの費用のうち、仲介手数料に比べて見落としやすいのが登記の費用です。金額そのものは大きくありませんが、住宅ローンが残っているか、登記の住所が今の住所と同じかによって、必要な登記と書類が変わります。この記事では、売主にかかる登記費用の内訳、登録免許税と司法書士報酬の目安、必要な書類、自分で申請する場合の流れを、登録免許税法・不動産登記法と法務局の案内にもとづいて説明します。
売却で必要になる登記と、費用を払う人
売却のときに申請する登記は、次の3つです。どれを誰が負担するかは法律で決まっているわけではなく、売買契約で決めます。下の表は一般的な分け方です。
| 登記 | 必要になるとき | 登録免許税 | 費用を払う人(一般的) |
|---|---|---|---|
| 抵当権抹消登記 | 住宅ローンの抵当権が登記されているとき(売却代金で返す場合も含む) | 不動産1個につき1,000円 | 売主 |
| 住所変更登記(氏名変更も同じ) | 登記されている住所・氏名が今と違うとき | 不動産1個につき1,000円 | 売主 |
| 所有権移転登記 | 必ず(買主の名義にする) | 不動産の価額の2%(軽減措置あり) | 買主 |
所有権移転登記の税率は、登録免許税法では2%です。土地の売買は令和11年3月31日までの登記なら1.5%、個人が住むために買う住宅用家屋は、要件を満たせば令和9年3月31日まで0.3%に下がります(国税庁 No.7191)。買主の側の費用なので、この記事では売主の2つの登記を中心に説明します。
登録免許税の計算:不動産の「個数」で決まる
抵当権抹消と住所変更の登録免許税は、売却価格ではなく登記する不動産の個数で決まります(登録免許税法 別表第一 一(十四)・(十五))。マンションの場合は、部屋(建物)1個と、敷地の土地の筆数を足して数えます。
| 敷地の筆数 | 抵当権抹消 | 住所変更 | 両方必要な場合 |
|---|---|---|---|
| 1筆(建物と合わせて2個) | 2,000円 | 2,000円 | 4,000円 |
| 2筆(同 3個) | 3,000円 | 3,000円 | 6,000円 |
| 3筆(同 4個) | 4,000円 | 4,000円 | 8,000円 |
敷地が何筆に分かれているかは、登記事項証明書で確認できます。1通の手数料は、オンラインで請求して法務局の窓口で受け取ると490円、オンラインで請求して郵送で受け取ると520円、書面で請求すると600円です(法務省「登記手数料について」、令和7年4月1日から)。なお、同じ申請書で20個を超える不動産の抵当権を抹消するときは、申請1件につき2万円になります。登録免許税は、収入印紙を台紙に貼って申請書と一緒に出すのが一般的です。
司法書士に頼む場合の報酬の目安
司法書士の報酬は、それぞれの司法書士が自由に決めます。目安として、日本司法書士会連合会が2024年3月に行った報酬のアンケートの結果を載せます。設例はいずれも土地1筆・建物1棟です。
| 登記 | アンケートの設例 | 平均 | 回答が多かった価格帯 |
|---|---|---|---|
| 抵当権抹消登記 | 解除証書などの作成と申請の代理 | 17,470円 | 1万円台(1,090件中717件) |
| 住所変更登記 | 住民票の写し1通の取り寄せと申請の代理 | 13,913円 | 1万円台(1,094件中853件) |
| (参考)売買の所有権移転登記 | 固定資産評価額の合計1,000万円、売買契約書などの作成と申請の代理 | 56,678円 | 4万〜6万円台 |
アンケートの注記にもあるとおり、決済の場に立ち会うための出張がある場合など、事案によって報酬は変わります。報酬とは別に、登録免許税や登記事項証明書の手数料などの実費がかかります。見積もりをもらうときは、報酬と実費を分けて書いてもらうと比べやすくなります。
仲介手数料・印紙税など、登記以外の費用を含めた全体の目安は「マンション売却にかかる費用一覧」にまとめています。
抵当権抹消登記に必要な書類
住宅ローンを返し終えると、抵当権者である金融機関から抹消のための書類が届きます。法務省の案内では、次のものが必要です。
| 書類 | 入手先 | メモ |
|---|---|---|
| 登記申請書 | 自分で作る(法務局の様式あり) | 法務局は作成の代行をしない |
| 登記識別情報(または登記済証) | 金融機関から届く | 古い抵当権では「登記済」の押印がある抵当権設定契約書 |
| 登記原因証明情報 | 金融機関から届く | 「解除証書」「弁済証書」など。日付や不動産の表示の書き漏れがないか確認する |
| 委任状(代理権限証明情報) | 金融機関から届く | 金融機関が所有者に申請を任せるための書類 |
| 金融機関の会社法人等番号 | 金融機関の書類に書かれている | 申請書に書く |
| 登録免許税(収入印紙) | 郵便局など | 不動産1個につき1,000円 |
権利に関する登記は、本来、権利者と義務者が共同で申請します(不動産登記法 第60条)。抵当権抹消では金融機関が義務者ですが、委任状を出してくれるので、所有者が一人で手続きできます。
ローンの残りを売却代金で返す場合の段取りは「住宅ローンが残っている家は売れる?」で説明しています。売主が契約・引き渡しで用意する書類の一覧は「不動産売却の必要書類」にまとめています。
住所変更登記に必要な書類
住所変更登記で必要なのは、申請書と、住所が変わったことを証明する書類です。
- 住民票の写し:登記簿の住所(引っ越す前の住所)、今の住所、住所を移した日が書かれた原本。マイナンバーが書かれていないものを使います
- 戸籍の附票の写し:何度か引っ越していて、住民票だけでは登記簿の住所からのつながりがわからないとき。本籍地の市区町村で取ります
- 住民票コード:申請書に書けば、住民票の写しを出さずに済む場合があります(住所を移した経緯が住民票で確認できないときを除く)
申請書の「原因」の日付は、住民票に書かれている住所を移した日です。届け出た日とは違うので注意しましょう。
住所変更登記は2026年4月から義務になった
不動産登記法の改正で、2026年(令和8年)4月1日から、所有者は住所や氏名が変わった日から2年以内に変更の登記を申請しなければならなくなりました(第76条の5)。正当な理由なく申請しないと、5万円以下の過料の対象になります(第164条第2項)。4月1日より前の変更で登記をしていないものは、令和10年3月31日までに申請が必要です。
売却の場面では、義務とは別の理由でも住所変更が必要です。売主(登記義務者)の住所・氏名が登記簿と合わない所有権移転の申請は、却下される決まりがあるためです(第25条第7号)。
自分で申請する場合の流れ
抵当権抹消も住所変更も、司法書士に頼まず自分で申請できます。法務省の案内に沿った流れは次のとおりです。
- 1書類をそろえ、登記事項証明書で内容を確かめる敷地の筆数、抵当権の順位番号、登記簿の住所・氏名を確認する。
- 2法務局の様式で申請書を作るA4・片面に印刷。複数枚になったら、つづり目に契印をする。
- 3収入印紙を台紙に貼り、申請書と一緒にとじる印紙は申請書に直接貼らず、印紙そのものに押印しない。
- 4不動産の所在地を管轄する法務局へ出す窓口に持参するか、封筒に「不動産登記申請書在中」と書いて書留で郵送する。オンライン申請もできる。
- 5登記完了証を受け取る窓口なら申請書と同じ印鑑を持参。郵送なら返信用封筒と書留分の切手を同封しておく。
法務局の登記手続案内は予約制です。案内を受けられても、申請書は自分で作ります。
自分で申請しやすい場面
- 売り出す前にローンを返し終えている:金融機関から書類が届いたら、売却とは別に抵当権抹消を済ませておけます
- 住所変更だけを先に済ませる:売買契約の前に終えておけば、決済の日の手続きが少なくなります
売却代金でローンを返す場合は、ローンの返済、抵当権の抹消、買主への所有権移転を決済の日に続けて申請します。買主や買主の金融機関は、抵当権が確実に消えることを前提に代金を払うため、この場合は買主側の司法書士にまとめて頼むのが一般的です。自分で申請したいときは、不動産会社に早めに相談しておきましょう。
まとめ
- 売主が負担する登記は、抵当権抹消と住所変更。登録免許税は不動産1個につき1,000円
- 司法書士の報酬は、2024年のアンケートで平均が抵当権抹消17,470円、住所変更13,913円。報酬は事務所ごとに違う
- 登記の住所が今と違うと、抵当権抹消も所有権移転も先に進まない。住所変更登記は2026年4月から2年以内の義務
- ローンを返し終えている場合や住所変更だけなら、自分で申請しやすい
参考にした資料
- 登録免許税法 別表第一 一(二)・(十四)・(十五)(e-Gov 法令検索)
- 国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」(令和8年4月1日現在法令等)
- 不動産登記法 第25条・第60条・第76条の5・第76条の6・第164条(e-Gov 法令検索)
- 法務省民事局「住宅ローンを完済したことなどによって不動産の抵当権の登記を抹消するための登記申請手続のご案内」(令和6年4月版)
- 法務省民事局「住所が変わったことにより所有者の登記簿上の住所を変更するための登記申請手続のご案内」(令和6年4月版)
- 法務省「住所等変更登記の義務化に関するQ&A」
- 法務省「登記手数料について」
- 日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施)
※ 2026年10月時点の制度にもとづく一般的な説明です。個別の手続きや費用は、法務局・司法書士・不動産会社にご確認ください。
よくある質問
- Qマンションを売るとき、登記費用は売主と買主のどちらが払いますか?
- A負担は売買契約で決めますが、一般的には、抵当権抹消登記と住所変更登記は売主、買主の名義にする所有権移転登記は買主が負担します。
- Q抵当権抹消の登録免許税はいくらですか?
- A不動産1個につき1,000円です(登録免許税法 別表第一)。マンションは部屋(建物)と敷地の土地を数えるので、敷地が1筆なら2,000円です。同じ申請書で20個を超える不動産の抵当権を抹消するときは、1件2万円です。
- Q司法書士に頼むといくらかかりますか?
- A報酬は司法書士が自由に決めます。日本司法書士会連合会の2024年3月のアンケートでは、土地1筆・建物1棟の場合の平均が、抵当権抹消17,470円、住所変更13,913円でした。報酬とは別に登録免許税などの実費がかかります。
- Q抵当権抹消は自分でできますか?
- Aできます。金融機関から届く登記識別情報・解除証書・委任状などと申請書を、管轄の法務局に窓口・郵送・オンラインで出します。売却代金でローンを返す場合は、決済の日に所有権移転と続けて申請するため、買主側の司法書士にまとめて頼むのが一般的です。
- Q登記の住所が昔の住所のままですが、売れますか?
- A売れますが、先に住所変更登記が必要です。売主の住所が登記と合わない所有権移転の申請は却下されます(不動産登記法 第25条第7号)。2026年4月1日からは、住所が変わった日から2年以内の住所変更登記が義務になっています。
サムネイルのイラストは AI で生成したイメージです







