マンションが売れないのはなぜ?「ワニの口」で読む価格の今後と、売り出し価格・値下げの決め方

売るナラウル編集部約13分で読めます

マンションが売れないのはなぜ?「ワニの口」で読む価格の今後と、売り出し価格・値下げの決め方のイメージ

この記事のポイント

  • 首都圏の中古マンションで、売り出された価格と実際に売れた価格の差が広がっています。2026年8月の㎡単価は売り出し(新規登録)116.81万円・成約81.60万円で、差は1年前の約3倍です
  • ただし「3割値引きしないと売れない」という意味ではありません。比べているのは別々の物件の平均で、高く売り出された部屋が売れ残り、在庫にたまっている状態です
  • 口が開いた背景は、売り手の強気・金利の上昇・買い手の予算の限界です。価格の今後は誰にも断定できませんが、見ておく指標ははっきりしています
  • 売る人は、売り出し価格を「売り出し中の価格」ではなく「成約した価格」から決め、問い合わせや内見の数を見て値下げを判断するのが基本です

マンションの「売り出し価格」と「成約価格」の差が開いていく様子は、グラフにするとワニが口を開けたように見えることから「ワニの口」と呼ばれ、話題になっています。この記事では、首都圏の中古マンションの公表データ(東日本不動産流通機構=東日本レインズの月例速報など)を使って、口がどれだけ開いているのか、なぜ開くのか、売りたい人はどう動けばいいのかを整理します。

「ワニの口」とは:売り出し価格と成約価格の差

東日本レインズは、首都圏(1都3県)の中古マンションについて、毎月次の2つの価格を公表しています。

  • 新規登録価格:その月に売り出された(レインズに新しく登録された)物件の価格の平均。いわば「売り手の希望」
  • 成約価格:その月に売買が決まった物件の価格の平均。「実際に買い手がついた価格」

この2本の線を並べると、売り出し価格が上あご、成約価格が下あごのように見えます。2つが離れていくほど、ワニが口を開けていくように見えるわけです。

時期成約㎡単価新規登録㎡単価差
2023年4〜6月71.15万円72.83万円1.68万円
2024年4〜6月77.50万円74.35万円▲3.15万円(成約のほうが高い)
2025年4〜6月82.85万円93.15万円10.30万円
2026年4〜6月83.13万円114.11万円30.98万円
2026年8月81.60万円116.81万円35.21万円
毎年8月の「口の開き」(新規登録㎡単価 − 成約㎡単価)
  • 2024年8月4.74万円/㎡
  • 2025年8月11.3万円/㎡
  • 2026年8月35.21万円/㎡

東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート」(2025年8月度・2026年8月度)をもとにナラウル編集部作成。首都圏(1都3県)の中古マンション。2026年10月5日確認

意外なのは、2024年4〜6月には成約の㎡単価のほうが売り出しより高かったことです。当時は売り出し価格が控えめで、出ればすぐ買い手がつく状態でした。そこから売り出し価格だけが走り出し、新規登録の㎡単価は2024年5月から28か月続けて前の年を上回っています。一方で成約の㎡単価は2026年5月から4か月続けて前の年を下回りました。

2026年8月の首都圏中古マンション、数字で見ると

指標2026年8月前年同月比
成約件数3,180件▲10.5%(5か月連続の減少)
新規登録件数15,627件+9.7%
在庫件数48,235件+8.2%(6か月連続の増加)
成約㎡単価81.60万円▲3.8%(4か月連続の下落)
新規登録㎡単価116.81万円+21.5%
成約価格5,129万円▲2.8%
新規登録価格6,751万円+21.5%
在庫価格6,939万円+29.0%

売れる数は減り、売りに出る数と売れ残りは増えています。平均価格で見ると、売り出しと成約の差は1,622万円です(1年前の2025年8月は279万円でした)。

地域によって動きが違うことも押さえておきたいところです。2026年8月、東京都区部の成約㎡単価は132.69万円で前年比▲0.3%と、2020年4月以来76か月ぶりに前の年を下回り、成約件数も▲20.6%でした。一方で、多摩(+9.1%)、埼玉県(+2.0%)、千葉県(+5.1%)、神奈川県の横浜・川崎市以外(+9.0%)は、成約㎡単価がまだ前の年を上回っています。

新築も変化が出ています。不動産経済研究所によると、2026年8月の首都圏の新築マンションは平均9,770万円(前年同月比▲5.4%)、㎡単価144.4万円(同▲9.1%、16か月ぶりの下落)、初月契約率61.1%、販売在庫は6,610戸で3か月続けて増えました。ただし新築の平均価格は、その月にどんな物件が売り出されたかで大きく振れます(7月は平均1億6,493万円)。1か月の数字だけで流れを決めつけないことが大切です。

「3割引きで売れる」ではない:ワニの口の正しい読み方

数字を細かく見ると、口の正体が見えてきます。

  • 広さ・築年数はほとんど同じ:2026年8月の成約物件は平均62.85㎡・築28.29年、新規登録は57.80㎡・築29.96年。条件の差は小さいのに、㎡単価は約3割違います。売れているのは相対的に手の届く価格の部屋で、高い価格を付けた部屋は売れにくくなっている、と読むのが自然です(どの地域の物件が売れたかの違いも含まれます)
  • 在庫のほうが売り出しより高い:在庫の㎡単価は119.36万円で、新規登録(116.81万円)を上回っています。高く売り出された部屋ほど売れずに残り、在庫にたまっていく形です
  • 在庫が「異常に多い」水準とまでは言えない:在庫件数を1か月あたりの成約件数で割った「在庫が何か月分あるか」は、2026年4〜6月で約11.6か月分。2023年4〜6月(約15.6か月分)や2024年4〜6月(約14.3か月分)より短く、増え始めたのは最近です(四半期の数字からナラウル編集部が計算)

東日本レインズ自身も、一時期・一部地域の動きを全体に当てはめないよう注意を呼びかけています。「首都圏全体が暴落している」でも「何も変わっていない」でもなく、売り出し価格と、買い手が出せる価格がずれ始めているというのが、いまの数字から言えることです。

なぜ口が開くのか:4つの理由

理由何が起きているか裏づけになる数字
売り手の強気値上がりの記憶や、近所の売り出し価格・新築の高値を基準に価格を付ける新規登録㎡単価は28か月連続で前年超え。売却経験者の33.5%が売却のきっかけに「価格が上がっていて高く売れそうだった」を挙げる(LIFULL HOME'S 調査)
金利の上昇同じ毎月の返済額で借りられる金額が減る日銀の政策金利は1.25%程度(2026年9月24日から)。フラット35(返済21〜35年・融資率9割以下)は2026年10月に3.83%で、比べられる2017年10月以降で最も高い
予算の限界住むために買う人が出せる額には、年収とローンで決まる上限がある下の試算を参照
投資需要の変化短期の転売を狙う買い手は、上昇が鈍ると買うのを控え、売る側に回りやすい東京23区の新築マンションのうち、2024年1〜6月に保存登記された物件の9.3%が1年以内に売買されていた(国土交通省)

金利が1%上がると、借りられる額はどれだけ減るか

年収800万円の世帯が、年収の25%(毎月約16.7万円)を返済にあてて35年で借りる場合の目安です。

金利借りられる額の目安
0.7%約6,207万円
1.2%約5,714万円
1.7%約5,273万円
2.2%約4,879万円
3.83%約3,852万円

※ 元利均等返済・ボーナス返済なし・金利が35年間変わらない前提でナラウル編集部が計算。実際の借入可能額は、金融機関の審査用の金利や返済比率で変わります。

金利が1.2%から2.2%に上がるだけで、借りられる額は約835万円(約15%)減ります。2026年8月の首都圏の中古マンションの平均は、売り出し6,751万円・成約5,129万円でした。売り出し価格が上がり続けても、買い手の財布はそれについていけない。これがワニの口の根っこにある構図です。

マンション価格は今後どうなる?断定せずに見る4つの指標

マンション価格の今後を言い当てることは誰にもできません。ただ、開いた口が閉じるときの形は、大きく3つしかありません。

口の閉じ方数字に表れる形売り手にとっての意味
売り出し価格が下がる新規登録㎡単価の伸びが鈍り、値下げされた在庫が売れていく売り出し価格を見直せば売れる
成約価格が追いつく金利が落ち着く・収入が伸びるなどで、成約㎡単価が再び上がる待つことで高く売れる可能性
取引が細ったまま続く成約件数が減り、在庫が増え続ける売れるまでの時間が長くなる

どの形になりそうかは、次の指標で確かめられます。

指標どこで見るか見るポイント
成約㎡単価の前年比東日本レインズ 月例速報(毎月中旬ごろ公表)マイナスが続くか、地域で違うか
在庫件数同上前年比の増え方が大きくなるか
新築の初月契約率不動産経済研究所 首都圏新築分譲マンション市場動向(毎月中旬ごろ)好不調の目安とされる70%を下回る月が続くか(2026年8月は61.1%)
住宅ローン金利日銀の金融政策決定会合、フラット35の毎月の金利、各銀行の基準金利変動金利の見直しの時期は銀行ごとに違う

国土交通省の「不動産価格指数」では、全国のマンション(区分所有)は2025年12月に225.1(2010年平均=100)でした。2026年1月分以降は、算出の不具合により公表が延期されています(2026年10月5日時点)。

相場全体の流れより大事なのは、自分の部屋がある地域・築年数の帯で何が起きているかです。上で見たとおり、東京都区部と郊外では同じ月でも動きが違います。

売る人へ①:売り出し価格は「成約事例」から決める

不動産会社の査定価格、自分で決める売り出し価格、実際に売れた成約価格は、それぞれ別のものです(くわしくは「マンション査定の方法と流れ」)。ワニの口が開いているいま、いちばん気をつけたいのは、近所で売り出し中の価格を自分の部屋の相場だと思い込むことです。売り出し中の物件は、まだ売れていない物件です。その価格は「売れない価格」かもしれません。

成約した価格は、次のような公的な仕組みで調べられます。

  • 国土交通省「不動産情報ライブラリ」:不動産の取引価格・成約価格の情報を、地域・時期ごとに検索できる
  • 東日本レインズなどの指定流通機構が運営する「レインズ・マーケット・インフォメーション」:成約した物件の価格の情報を地域ごとに見られる
売り出し価格の付け方よい点気をつけること
成約事例どおり問い合わせが集まりやすく、早く決まりやすい交渉の余地が小さい
成約事例より少し上値引き交渉の幅を持てる反響が少なければ早めの見直しが必要
売り出し中の物件に合わせる(成約事例より大きく上)うまくいけば高く売れる売れ残って値下げを重ね、かえって安くなることも

ポータルサイトでは「5,000万円以下」のように価格の区切りで検索されることが多いため、区切りのすぐ上の価格だと検索に出てこない、ということも起こりえます。価格を決めるときは、担当者にどの成約事例を根拠にしたのかを聞きましょう。不動産会社は、価格について意見を述べるときに根拠を示さなければならないと法律(宅地建物取引業法 第34条の2)で決まっています。

売る人へ②:値下げのタイミングは「反響」で決める

LIFULL HOME'S が2026年7月に行った調査(過去3年以内に東京圏のマンションを売った507人)では、売却にかかった期間は「3か月以上6か月未満」が42.3%で最も多く、平均は約6.1か月でした。数か月で決まらないこと自体は珍しくありません。

大事なのは、値下げを「なんとなく」ではなく、問い合わせと内見の数で判断することです。専任媒介なら2週間に1回以上、専属専任媒介なら1週間に1回以上、不動産会社から販売状況の報告があります。

  1. 1売り出しから2週間:問い合わせの数を見るポータルサイトの閲覧・問い合わせがほとんどないなら、価格が相場から離れているか、検索に引っかかっていない可能性。
  2. 21か月:内見の数と感想を見る内見はあるのに申し込みがないなら、部屋の状態と価格が合っていないサイン。担当者に買い手の反応を具体的に聞く。
  3. 33か月:媒介契約の区切りで見直す専任・専属専任媒介の契約期間は3か月以内。更新のときに、価格・売り方・任せる会社をまとめて見直す。
起きていること考えられる原因打ち手
問い合わせがほとんどない価格が成約相場より高い、検索の価格帯からはみ出している価格帯の区切りをまたぐ見直し、写真・間取り図の見直し
内見はあるが申し込みがない室内の印象、価格と状態のずれ片づけ・クリーニング、修繕歴の説明、価格の見直し
申し込みはあるが値引きの要望が大きい買い手の予算の上限に近い手取りから「ここまでなら売る」下限を決めて交渉する

いくらまでなら下げてもいいかは、気持ちではなく手取りで決めましょう。

急がないなら:売らずに待つ・貸す・買取という選択肢

ワニの口が開いているときに無理に売る必要がない人もいます。選択肢ごとの向き・不向きを並べます。

選択肢向いている人気をつけること
売り出し価格を見直して売る住み替えの時期が決まっている下限を手取りで決めておく
売らずに住み続けて待つ急いで売る理由がない金利、管理費・修繕積立金の値上がり(首都圏の成約物件の修繕積立金は2025年度に前年度比5.6%上昇)
貸す住まなくなるが手放したくない住宅ローンのまま貸せるか、税金、3,000万円控除の期限(「売るか貸すか」)
不動産会社の買取すぐ現金にしたい、内見の手間を避けたい仲介で売るより価格が低くなるのが一般的

住まなくなってから売る場合は、マイホームの3,000万円特別控除が使えるのは住まなくなってから3年目の12月31日までです。待つときも、この期限は忘れないようにしましょう(「マンション売却の税金はいくら?」)。

まとめ:口が開いているときこそ「成約」を見る

  1. 1売り出し中の価格ではなく、成約した価格で相場をつかむカチミルや不動産情報ライブラリで、取引された価格を確認する。
  2. 2手取りから「ここまでなら売る」線を決めるテドリ計算で、値下げした場合の手取りも確かめておく。
  3. 3売り出したら、反響の数で見直す2週間・1か月・3か月の区切りで、問い合わせと内見の数を見る。

まだ売ると決めていないなら、ナラウルの「売るかも」に登録しておく方法もあります。登録しても売り出しにはならず、参考価格を月に1回見直して、大きく動いたときにお知らせします。売る気になったときだけ、同意のうえで提携の不動産会社を紹介します。

参考にした資料

  • 東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート」2024年8月度・2025年8月度・2026年8月度(2026年9月10日公表)
  • 東日本不動産流通機構「季報 Market Watch サマリーレポート」2026年4〜6月期(2026年7月17日公表)
  • 東日本不動産流通機構「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2025年度)」(2026年5月28日公表)
  • 不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2026年8月」(2026年9月17日公表)
  • 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日)
  • 住宅金融支援機構【フラット35】2026年10月の借入金利
  • 国土交通省「不動産価格指数(令和7年12月・令和7年第4四半期分)」(2026年3月31日公表)
  • 国土交通省「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査結果」(2025年11月25日公表)
  • LIFULL HOME'S「東京圏のマンションの売却に関する意識調査」(2026年7月実施)
  • 宅地建物取引業法 第34条の2(媒介契約)

※ 数字はいずれも2026年10月5日に確認しました。東日本レインズのデータは首都圏(1都3県)のものです。将来の価格を予想・保証するものではありません。売却の判断は、ご自身の状況にあわせて不動産会社・税理士などの専門家にご相談ください。

よくある質問

Qマンションの「ワニの口」とは何ですか?
A売りに出された物件の価格(新規登録価格)と、実際に売買が決まった物件の価格(成約価格)の差が開いていく様子を、グラフの形からワニの口にたとえた言い方です。首都圏の中古マンションでは、2026年8月に㎡単価で新規登録116.81万円・成約81.60万円と、差が1年前の約3倍に開いています(東日本レインズ)。
Q成約価格が売り出し価格より3割安いなら、3割値引きしないと売れないのですか?
Aそうとは限りません。比べているのは「その月に売り出された物件」と「その月に売れた物件」という別々の物件の平均です。高く売り出された部屋が売れ残って在庫にたまっている状態を表していて、同じ部屋が3割値引きされているわけではありません。
Qマンションが売れないとき、値下げはいつ考えればいいですか?
A時期よりも反響で判断するのが基本です。売り出しから2週間で問い合わせがほとんどない、1か月で内見はあるのに申し込みがない、といった状況を見て、媒介契約の区切り(専任・専属専任は3か月以内)で価格と売り方を見直します。下げてもよい額は、手取りから決めておきましょう。
Qマンション価格は今後下がりますか?
A将来の価格は誰にも断定できません。首都圏の中古マンションは2026年に入り成約価格が前年を下回り始めましたが、地域によって動きは違います。成約㎡単価の前年比、在庫件数、新築の初月契約率、住宅ローン金利の4つを定期的に確かめるのがおすすめです。

サムネイルのイラストは AI で生成したイメージです

あわせて読みたい