この記事のポイント
- 住み替えで家を売って利益が出たとき、3,000万円控除と買い替え特例は同じ売却に重ねて使えず、どちらかを選びます
- 3,000万円控除は売った年の譲渡所得から最高3,000万円を差し引き、差し引いた分は後から課税されません
- 買い替え特例は売った年の課税を、買い換えた家を将来売るときまで繰り延べる特例です(非課税にはなりません)
- 買い替え特例は居住期間10年以上・所有期間10年超・売却代金1億円以下などが要件で、令和9年12月31日までの売却が対象です
- どちらの特例も、使う年の組み合わせによっては新しい家で住宅ローン控除を受けられません
いつか住み替えるとき、いまの家を売って利益が出れば税金の特例を使えることがあります。代表的なのが、3,000万円の特別控除と、特定の居住用財産の買換えの特例(買い替え特例)です。2つの違いは、課税のタイミングにあります。
どちらを使えるかは、所有期間・居住期間・売却代金などの要件で分かれます。新しい家で住宅ローン控除を受けるかどうかも、選び方に関わります。この記事では、国税庁のタックスアンサーにもとづいて、2つの特例の効果と要件、計算例、住宅ローン控除との関係、売り先行・買い先行での違いを整理します。
3,000万円控除と買い替え特例の違いは課税のタイミング
3,000万円控除は課税される所得そのものを減らし、買い替え特例は課税を先に送ります。国税庁のNo.3355は、買い替え特例について「譲渡益が非課税となるわけではありません」と明記しています。
| 比べる点 | 3,000万円の特別控除(No.3302) | 買い替え特例(No.3355) |
|---|---|---|
| 売った年の扱い | 譲渡所得から最高3,000万円を控除 | 買い換えた金額が売った金額以上なら、譲渡所得がなかったものとされる |
| 控除・繰延べした分 | 後から課税されない | 買い換えた家を売るときに、繰り延べた分を足して課税 |
| 軽減税率の特例(No.3305) | 所有期間10年超なら重ねて使える | 重ねて使えない |
| 新しい家の購入 | 要件ではない | 要件(期限内の取得と入居) |
| 手続き | 確定申告が必要 | 確定申告が必要 |
No.3358は、買い替え特例を受ける場合に3,000万円の特別控除と軽減税率の特例を重ねて受けることはできないとしています。
2つの特例の要件を比べる
3,000万円控除は所有期間を問いませんが、買い替え特例は長く住んだ家に限られます。主な要件を令和8年4月1日現在の法令等で並べました。
| 要件 | 3,000万円の特別控除 | 買い替え特例 |
|---|---|---|
| 売る期限 | 住まなくなった家は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで | 同左、かつ令和9年12月31日まで |
| 所有期間 | 問わない | 売った年の1月1日に家屋・敷地とも10年超 |
| 居住期間 | 問わない | 10年以上 |
| 売却代金 | 問わない | 1億円以下 |
| 買い換える家 | ― | 売った年の前年から翌年までに取得。床面積50㎡以上、土地500㎡以下など |
| 前年・前々年の特例 | この特例やマイホームの譲渡損失の特例を受けていない | 売った年・前年・前々年に3,000万円控除などを受けていない |
| 売った相手 | 親子・夫婦など特別の関係がある人でない | 同左 |
買い替え特例では、新築の家の省エネ基準や中古住宅の築年数・耐震基準などの要件もあります。詳しくはNo.3355で確認してください。
3,000万円控除で表のほかに確かめる要件
国税庁No.3302は、表に挙げたもののほかにも次の要件と対象外の家屋を示しています。
相続した空き家を売る場合は、被相続人の居住用財産(空き家)の特例(No.3306)という別の特例になり、要件も違います。
同じ売却で比べる2つの計算例
効果の違いは、売った年と、買い換えた家を将来売る年の両方で見ます。例1は国税庁No.3355、例2はNo.3358に載っている数字で、どちらも両方の特例の要件を満たすと仮定しています。
例1:高い家に買い換えた場合
1,000万円で買った家を5,000万円で売り、7,000万円の家に買い換えた例です(減価償却などは考慮しません)。売った年の譲渡益は4,000万円です。
| 比べる点 | 3,000万円控除を使う | 買い替え特例を使う |
|---|---|---|
| 売った年の課税対象 | 4,000万円−3,000万円=1,000万円 | なし |
| 新しい家を8,000万円で売ったときの譲渡益(そのときの特例は考えない) | 8,000万円−7,000万円=1,000万円 | 1,000万円+繰り延べた4,000万円=5,000万円 |
例2:売った金額より安い家に買い換えた場合
1億円で売り、7,000万円の家に買い換えた例です。取得費は1,000万円、売るための費用は500万円です。
| 比べる点 | 3,000万円控除を使う | 買い替え特例を使う |
|---|---|---|
| 計算 | 1億円−(1,000万円+500万円)−3,000万円 | 収入3,000万円−必要経費450万円 |
| 課税対象 | 5,500万円 | 2,550万円 |
買い替え特例では、売った金額と買い換えた金額の差額3,000万円を収入金額とし、必要経費は(1,000万円+500万円)×(3,000万円÷1億円)で計算します(No.3358)。
例2では売った年の課税対象は買い替え特例のほうが小さくなりますが、3,000万円控除には軽減税率の特例を重ねられます。税額で比べるには税率まで入れた計算が要るので、税務署か税理士に試算を頼んでください。
住宅ローン控除を受けられない年がある
新しい家で住宅ローン控除を受けるなら、特例を使う年に注意が要ります。国税庁No.1211-1は、住宅ローン控除の要件として、入居した年とその前2年・後3年の計6年間に、3,000万円控除や買い替え特例を受けていないことを挙げています。
住宅ローン控除を受けた後に前の家を売って特例を使う場合、売った年の前3年以内に受けた住宅ローン控除について、その年分の確定申告期限までに修正申告などをして、控除分の税額を納めることになります。国税庁の質疑応答事例は、対象になる特例に居住用財産の譲渡所得の特別控除(租税特別措置法第35条)と特定の居住用財産の買換えの特例(同法第36条の2)が含まれ、期限は資産を譲渡した日の属する年分の確定申告期限としています。
売り先行と買い先行で変わる特例の年
住み替えは、今の家を先に売る「売り先行」と、新しい家を先に買う「買い先行」に分かれます。どちらで進めるかで、売る年と新しい家に住み始める年の前後が入れ替わり、上の住宅ローン控除の組み合わせに当たるかどうかが変わります。
| 比べる点 | 売り先行 | 買い先行 |
|---|---|---|
| 資金計画 | 売却額が決まってから購入するので立てやすい | 売却額が決まる前に買うため、見込みで立てる |
| 住宅ローン | 二重に払う期間が生じにくい | 売れるまで新旧のローンを払う期間が生じうる |
| 住まい | 引き渡しまでに次の家が決まらないと仮住まいが要る | 仮住まいは要らない |
| 特例と住宅ローン控除 | 入居した年・前年・前々年に特例を受けると、新しい家で住宅ローン控除を受けられない | 入居した年の翌年から3年目までに前の家を売って特例を受けると、受けた住宅ローン控除の修正申告が要る |
買い替え特例は、売った年の前年から翌年までに買い換えることが要件なので、どちらの順番でも期限内なら使えます。翌年に取得する場合は、取得した年の翌年12月31日までに住むことが必要で、書類の出し方も変わります。
買い先行では、購入の契約に「今の家が期日までに一定の価格で売れなければ購入の契約を解除できる」といった条件(いわゆる買い替え特約)をつけられる場合があります。売主が応じるかは交渉しだいです。
今の家に住宅ローンが残っているなら、売却額でローンを返しきれるかを最初に計算します。抵当権の外し方と返しきれない場合の方法は「住宅ローンが残っている家は売れる?」にあります。住みながら売るか空けてから売るかの違いは「住みながら売るか、空けてから売るか」で比べています。
まとめ:要件と住宅ローン控除への影響を並べて選ぶ
- 3,000万円控除は課税対象を減らし、買い替え特例は課税を将来に繰り延べる
- 買い替え特例は居住10年以上・所有10年超・売却代金1億円以下などが要件で、令和9年12月31日までの売却が対象
- 3,000万円控除は軽減税率の特例と重ねられるが、買い替え特例は重ねられない
- どちらの特例も、入居年の前後の組み合わせによっては住宅ローン控除を受けられない
- 売り先行か買い先行かで、売る年と入居する年の前後が入れ替わる
まだ売る時期が決まっていなくても、登記事項証明書で取得日を確かめ、住み始めた日から居住期間を数えておくと、どちらの特例が候補になるかがわかります。両方の要件を満たしそうなら、住宅ローン控除との組み合わせも含めて税務署か税理士に相談します。
参考にした資料
- 国税庁 タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」
- 国税庁 タックスアンサー No.3355「特定のマイホームを買い換えたときの特例」
- 国税庁 タックスアンサー No.3358「売った金額より少ない金額でマイホームを買い換えたとき」
- 国税庁 タックスアンサー No.3305「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
- 国税庁 タックスアンサー No.1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
- 国税庁 質疑応答事例「居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例等の適用を受ける場合の修正申告」
※ 2026年9月15日に確認した資料(タックスアンサーは令和8年4月1日現在、質疑応答事例は令和7年8月1日現在の法令等)にもとづく一般的な説明です。個別の税額は税務署または税理士にご確認ください。
よくある質問
- Q3,000万円控除と買い替え特例は、同じ売却で併用できますか?
- Aできません。買い替え特例を受ける場合は、3,000万円の特別控除と軽減税率の特例を重ねて受けられません(国税庁 No.3358)。
- Q買い替え特例を使えば、税金はかからなくなりますか?
- Aかからなくなるわけではありません。売った年の課税を、買い換えた家を将来売るときまで繰り延べる特例です。
- Q売った年に新しい家を買えなかった場合、買い替え特例は使えませんか?
- A売った年の前年から翌年までの3年の間に買い換えることが要件です。翌年に取得する場合は、取得した年の翌年12月31日までに住むことが必要で、書類の出し方も変わります。
- Q家を取り壊して更地にしてから売っても、3,000万円控除は使えますか?
- A取り壊した日から1年以内に譲渡契約を結び、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売るなどの要件を満たせば対象になります。取り壊した後、契約までの間に敷地を貸駐車場などに使っていると対象外です(国税庁 No.3302)。
サムネイルのイラストは AI で生成したイメージです







